卒業旅行
 彼女の名前は後野席子。
 変わった名前だが、こればかりは彼女自身にはどうしようもない。そして高校生活の3年間、文字通り彼女は俺にとって後ろの席の女の子であり続けた。
 俺が通ったきらめき高校はクラス替えというものが無い。3年間同じ面子のまま持ち上がりだ。でも学期毎の席替えはある。クジ引きで決めるので、本来周りのメンバーはランダムに変化する筈である。しかし、席子は3年間常に俺の真後ろだった。これだけ偶然が続くと彼女の名前も相まって、当然からかいのネタになる。「実は赤い糸で結ばれてるんじゃないの?」とかいうお定まりのヤツだ。彼女は凄く可愛い子だったので、俺の方は満更でもなかったが、彼女の方は最初どう思ってたのかは知らない。ともあれ、何となくお互い意識するようになって、結局付き合うようになったのだから、何がきっかけになるか分からない。蛇足だが、3年間俺の右隣に偶然座り続けたのは、悪友の早乙女好雄だ。こちらも当然「実は2人はデキている」などという無責任な噂も流れたが(勿論冗談としてだが)それだけは勘弁願いたい。(笑)こと席順に関しては変化に乏しい学園生活だったと言えるワケだ。
 初めて席子と結ばれたのは、3年の秋だった。白状すると俺は初めてではなかった。最初は席子と…という気持ちも当然強く持っていたのだが、やはりいざ席子とコトに及ぶ時には、まごついてかっこ悪いとこを見せたくない、男らしくリードしてみせたい、という気持ちには勝てずナケナシの貯金を叩いてソープに繰り出したのだ。流石に受付の前に立った時はドキドキしたが、スンナリ通してもらえた。子供っぽい容姿では無いのが幸いしたのかも。そんなに高級な所に行けるワケは無いので、大して期待はしていなかったのだが、あたったのは小柄なとても可愛らしい人だった。多分ラッキーだったのだろう。正直に童貞である事を告げて、事情を話したら、こちらが恐縮するくらい懇切丁寧に色々と教えてくれた。最初がこの人で良かったと思う。席子の存在がなかったら、通い詰めてしまったかも知れない。(笑)
 3年のある秋の日。そろそろ夏の装いでは肌寒くなってきた頃、ショッピング街でのデートの帰りに席子の家に寄った。家族は皆出掛けていて誰もいなかった。多分彼女も期待していたんだろうと思う。彼女は初めてだった。別にこだわってはいなかったが、やはり嬉しかった。彼女の苦痛を和らげる為に出来る限りの努力をし、優しくしたつもりだ。
 席子は3年間水泳に打ち込んでいた。同学年に日本記録まで持つとんでもない超高校生スイマーの清川さんという子がいたから、そんなには目立たなかったが、2年と3年の時にはインターハイの全国大会にも出たくらいだから、中々の選手だったのだ。彼女の専門は背泳である。結構な巨乳なので、泳ぐ姿は見事なものだった。いや、そんな邪な気持ちで応援してはいけない事は分かっているのだが、こちらも健全な男子高校生である。応援しながらもついつい興奮してしまうのは許してほしい。席子のファンである男子はかなり存在したと思う。俺と付き合い始めたと知って、がっくり肩を落とした野郎の数は少なくない筈だ。
 ま、というわけで彼女は鍛え抜かれた素晴らしいプロポーションをしている。しょっちゅう水着姿を拝んでいるので当然それは分かる。で、彼女は初めてだったというのに俺は頼み込んで部屋の明りを点けたままにしてもらった。勿論席子は最初恥ずかしがったが、君の美しい姿をこの目に焼き付けたいんだとかなんとか、今考えると恥ずかしくなるような美辞麗句を並べ立てて、許してもらった。もしかすると最後に思い付いた「下手に明りを消すと近所の人に怪しまれるかも知れないし」という俺の台詞に心が動いたのかも知れないが。それ以来、いつもHの時は明りを点けたままだ。彼女も段々平気になってきたというか、当たり前になってきたみたいだ。有難い事だ。
 初めて見る、席子の生まれたままの姿は素晴らしかった。手足がスラリと長く、無駄な肉は全く付いていない。筋肉質なんだけど、彼女が気にするように「ごつい」なんて事は断じて無い。スポーツで自然についた筋肉だから寧ろ全身に艶めかしさを与えていると思う。そして胸。予想以上に大きくてキレイだった。鍛えているだけあって、ブラを外しても形が崩れるなんて事はない。そんな席子と一つになった瞬間は、物凄く気持ち良かったのと同時に物凄く感動した。俺は2回目だったとはいえ、やはり好きな女の子と結ばれるという事はまた格別なものだ。彼女はやはり最初は痛がったけど、普段の運動量が多いせいか、そんなに長く苦痛が続く事はなかったようだ。俺が自分を必死に抑え、性急になる事無く彼女の様子を見ながら慎重に動いた為もあるだろうが。最後には無事同時にクライマックスを迎える事が出来た。終わりの方では、彼女の声が近所に洩れないかとヒヤヒヤしたほどだった。2度目にしては上出来だろうと自画自賛しておこう。尤も終った後、席子が「初めてなのに、こんなに乱れてしまって恥ずかしい」と言って中々こちらを向いてくれないので、なだめるのに苦労したけどね。
 後で席子に聞いたら、「お母さんは口に出しては言わないけれど、何となく気付いているんじゃないかと思う。」と言ってた。女同士の勘って、恐ろしい。



 で、今俺達は卒業旅行という名目で日光に来ている。お互いのカモフラージュの為に、好雄とその彼女も一緒なワケなんだけど、勘のいい席子のお母さんの事だから、感付いているんだろうな。お土産は奮発した方がいいかもしれない。好雄のお相手は文芸部の部長だった、如月未緒さんという子だ。知的で物静かな美人である。よくまあ好雄が彼女に出来たもんだと思うのだが、互いに自分に無い部分に魅かれ合うものなのかも知れない。それにも増してよく如月さんがカップル2組の旅行なんてのに同行するのを決意してくれたものだ。待ち合わせ場所で合流した時も、凄く恥ずかしそうだったものなあ。そんなに恥ずかしいのについてきてくれたという事はよほど好雄に惚れてるんだろう。羨ましいことだ。などと言ったらバチがあたるな。まあ、それにもうあの2人も済ませているのかも知れないな。等と考えていたら、席子が「あの2人も、もう済ませているみたいね。」と、ヤケに断定的に言った。ソウデスカ。間違いなく席子もお母さんの血を引いているようだ。俺も浮気などはしないようにしよう。する気もないけどね。
 既に何度も愛し合った仲だったけど、卒業式の日、「私のけじめだから」と言って席子は伝説の樹の下で俺に告白してくれた。嬉しかった。陽の光を浴びて樹の下に立つ彼女は美しかった。こんな素敵な子を恋人に出来た歓びを改めて噛みしめたものだ。
 その素敵な恋人は今、バスタオル1枚を巻いただけという辛抱堪らん姿で俺の前に背中を向けて立っている。4人で一通り観光を済ませた後、ホテルに戻り一緒にシャワーを浴びたところである。高校を卒業したばかりという身分ゆえ、それほど高級なホテルではないが、小綺麗な洒落た部屋で俺は気に入った。好雄たちは隣の部屋だ。同じホテルとゆーのも気恥ずかしいのだが、後々話の辻褄が合わなくならないようにという配慮で仕方がない。専らボロを出しそうなのは、俺と好雄なんだけど。(笑)
 ふと気が付くと、席子が恥ずかしそうにモジモジしながら、こちらを振り返っている。何だろう?今更そんなに恥ずかしがる仲でもないというのに。旅先というとまた気分の変わるものなんだろうか?
 「ねえ……。」
 「何?」
 「その……、今日は後ろからお願い。」
 「えっ!?」
 我ながら素っ頓狂な声を出してしまった。後ろからというと、後背位ということか。そう言えば今迄、正常位か、せいぜい彼女が上に乗る事くらいしか無かった。珍しく彼女の方からそんな大胆な申し出をしてきたので、一瞬驚いてしまったのだ。席子はというと、ますます恥ずかしそうに俯いてしまっている。いかんいかん。折角彼女が思い切って自分からそんな事を言ってきてくれたのに、気まずくさせてどうする。そこで俺は殊更に明るく、
 「いいよ。じゃあ、ベッドに手をついて。」と言った。
 席子は何だか嬉しそうに右手をベッドにつけ、左手でバスタオルをウェスト近くまで刷り上げながらこちらにお尻を向けた。
 (うわ・・・。こ、これはなんとゆー絶景・・・。)
 実は先程バスルームで2人で洗いっこをしながら、さんざんお互いの身体を弄りまくってきたので、2人とも結構気分が盛り上がっていたのである。さっききれいに洗ったばかりだというのに、剥き出しになってこちらに向けられた彼女のその部分からは新たに蜜が溢れ出し、既に膝の方まで流れ落ちようとしている。俺もずっと半勃ち状態をキープしていたんだけど、こんな光景を見せられては、あっという間に臨戦状態になってしまうのも無理からぬところだ。俺にしては少々乱暴に席子のバスタオルを剥ぎ取ってベッドの上に放り投げた。俺自身が腰に巻いていていたタオルは床に投げ捨てる。その時、そう言えば席子を後ろからまじまじと見つめた事がなかったのに気が付いた。ピンと張った円いヒップは陶器のようにスベスベで、背中もまた美しい。背筋もかなり発達しているが、それがまた艶めかしい。俺は口に出して言った。
 「今頃気付いたけど、背中から見ても君はきれいだよ。」
 「……ありがとう……」
 たっぷりと艶を含んだ声だ。言葉にはしないが「早く…」とせがんでいるのだ。いつもなら挿入するまでに、たっぷりと席子の身体を味わうんだけど、今はどちらもその余裕は無さそうだ。とは言え、俺は慌てる事無くスキンを装着する。やはりきちんと責任を取れる状況になるまでは、これだけはちゃんとしようと、いくら興奮している時でも律義に守っているのである。
 「じゃ…挿れるよ?」
 「う…ん」
 ズッ……!
 躊躇せず一気に根本まで押し込んだ。充分に濡れていたので、殆ど抵抗なく俺の分身は吸込まれていった。
 「んっ!」
 「ハ……ンッ!!」
 満遍なく俺のモノは圧迫される。いつもの席子の感触。当然筋肉の発達した彼女なので、ここの締め付けもきつい。でも決して暴力的な締め付けでは無くて、あくまで柔らかく柔らかく締めつけてくる。何となくほっとして俺は落ち着きを取り戻し、暫く席子の感触を味わった後、ゆっくりと抽送を開始する。
 チュクッ チュクッ チュクッ……
 何で急に後ろからなんて?と聞こうと思ったら、
 「うふふ……」
 と席子が楽しそうに笑った。
 「どうしたの?」
 「初めて私が前だね。」
 「……」
 1秒とちょっと、その言葉の意味を考えて俺は彼女の言わんとしている事に気付いた。
 「あっ、そうか。」
 俺も笑った。彼女は時々いたずらっ子みたいな時がある。そこがまた可愛いんだけど。

 チュクッ チュクッ チュクッ……
 「何?たま…には、俺の隣りと…か前にも座りたか…った?」
 「んっ…、ううん。それ…が私達のきっ…かけだったんだし…。そ、それに…あんっ!」
 「それ…に?」
 「あな…たの隣りは好雄君の…あふっ!…し、指定席だった…し…。」
 「それを言う…な。それを…」
 チュクッ チュクッ チュクッ……
 「初めて君をちゃんと見…たのは、前からまわってきたプリ…ントを渡した時だったな…。」
 「だ、第一印象は…ハッハッ…、ど、どうだったの…?」
 「そ…りゃ、お〜、可愛い子だなあ、ラッキー…と。君は…?」
 「んっ…!んー。なん…か冴えない奴ぅ…って…。」
 「あっ。ひでえ…なあ。お世辞…でも…」
 俺は席子の腰を支えていた左手を伸ばし席子の左の乳首をぷにっと押す。
 「ひゃうっっ!ご…ご免なさい…。で、でもっ。」
 「で…も?」
 ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ……
 「あっあっあっ…あなた…って…、2年間くら…いの間に、ど…んどんカッコ良くなっ…ちゃって…ぁぁ…。」
 「そ…そう…かな?」
 俺も3年間バスケ部に真剣に打ち込んできた。確かに逞しくはなったかも知れない。
 「3年にあがる頃に…は…ああっ!」
 ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ……
 のろけているばかりのようで悪いのだが、席子の声は柔らかくてとても可愛い。肺活量があるので、よく通るし。これで喘ぎ声でも出された日には、知らず知らず腰の前後運動速度も上ってこようというものだ。自分では分からないのだが、席子に言わせると俺の声も、優しくていい声なんだそうだ。そのせいなのか、俺達は行為の最中お互いに割とよく喋る。んで、お互いの声を聞いている内に益々興奮が増していくという具合だ。
 ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ……
 「じ…授業中あな…たの後ろ姿眺め…てるのが、だ、大好き…に…はぁんっ!な、なってた…な…」
 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ……
 「くうぅ〜〜〜〜〜〜っ!か…可愛いこと言ってくれるなあ…。」
 もう腰のスピードにターボがかかって止まらないデスヨ…………。
 席子は、両腕でも身体を支えきれなくなってベッドに突っ伏した。足にも力が入らなくなってしまったようで、両膝とも床についてへたりこんでしまう。俺も合わせて片膝をつき、鍛え上げた膂力でもって彼女の腰を支えながら尚も責め立てる。もう席子には話し続ける余裕が無くなってしまったらしく、断続的に苦しげな、しかし可愛らしい喘ぎ声を漏らしている。
 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ……
 「こう…した方がもっといい…かな?」
 俺は左手1本で彼女を支えられるように抱え直し、右手を前に回して席子の股間にもって行くと、程なくクリトリスを探り当てた。充分愛液でコーティングされていたけれど、乱暴に弄くったりはせず、ほんの軽く触れる程度に指の腹で転がした。
 「ひあっ!だ…駄目ぇっ!」
 「駄目…なの?じゃあやめる?」
 「いやぁ〜〜……。」
 「どっちなの…さ。ねぇ…はっきり言ってごら…」
 あ。まずい。席子が恨めしそうな目でこっちを見て頭をフルフルさせている。
 「ごめ…ん。もう意地悪はしないよ。」
 恨めしそうな目のまま今度はコクコクと頷く。言っておくが俺は言葉嬲りなんて今迄した事が無い。やはり馴れない事はするもんじゃない。興奮のあまり暴走してしまったようだ。でも……。
 パンパンパンパンパンパン……
 今の席子の表情で更に興奮が増してしまったようだ……。可愛かったな…今の顔。またやってしまうかも知れないな。男ってアホだよな…つくづく。
 パンパンパンパンパンパン……
 席子の声がどんどん大きくなっていく。隣りの好雄達に聞こえやしまいかとヒヤヒヤしたが、それもどうでもよくなってきた。2人とも限界が近い。
 「も…もう駄目ぇっっ!来てっ!きてぇっっ!!」
 「をををっっ!!」
 どくんっ どくんっ どくんっ……
 久し振りだったので、液体というより細かい固まりの集合のようなものが、俺の陰茎を強引に押し拡げて通り過ぎて行った。自分でもびっくりする程大量に。
 「ふうっ…、ふうっ…、ふうっ…」
 (き…気持ち良かったあ…。)
 「はあっ…、はあっ…、はあっ…、はあっ…」
 暫く2人で床にへたりこんでボーッとしてしまった。たまにはこんなワイルドなのもいいかも知れないな。疲れるけれどもね。でも、席子のまた違った魅力が発見出来た感じで良かった……。



 その後ベッドにあがって、今度は3時間ほどゆっくり時間を掛けて更に2度愛し合った。流石に体力自慢の2人も疲れ切ってぐったりとしていた。時刻は深夜2時を少し回ったところだ。
 「明日はどこに行こうかなあ。」
 「元気ねぇ。それより明日4人で顔合わせる時ちょっと恥ずかしいね。」
 「そうだなあ。如月さんなんて、どんな顔で来るんだろ。」
 「あ。わたしの事は心配ぢゃないんだ。」
 席子が軽く俺の肘の辺りを抓る。彼女は女の子にしては力があるので、冗談半分にしても結構痛い。
 「痛っ。大丈夫。席子は俺が守るから。一生かけてお守り致し…」
 「はい。パクりは減点。」
 また抓られた。今度のは照れ隠しの意味もあるのか、さっきほど痛くない。
 「ちぇ。どうせボキャブラリー無いですよ。でも…ホントの事だから。」
 「うん…。ありがと。」
 席子は安らかに寝息をたて始めた。俺の隣で安心しきっているのだろう。きっと俺が守ってやるからな、と先程の誓いを暗闇の中で一人意気込んで繰り返してみる。でもなあ、かっこいい事言ってみたところで、きっと尻に敷かれるんだろうなあ、俺。と、情けない事を考えた途端、バンッと席子の形のいい尻が極めて具体的に思い出された。うん。あんな尻になら敷かれてもいいよな。今度実際、顔の上にでも座ってみて欲しいものだな。アホな事を考えながら眠りについたら、その通りの夢を見た。夢の中とは言え、ちょっと息苦しい感じがしたが、幸福な気分だった。


お終いである