【KOTOKO STRIKES(前編)

12月も中旬の思い切り冷え込んだある日の放課後。
俺は茶道部の部室に、昨日の忘れ物を取りに向かった。
今日は部活は休みだ。
部室の前まで来ると、誰もいない筈の部室から明りが漏れている。
「?」
訝りながら、扉を開けると、すぐさま奥から怒声が飛んで来た。
「ちょっと!誰!?寒いじゃない。早く閉めてよ!」
「あ。はいはい。」
聞き覚えのある声だ。奥に向かうとはたして同じ茶道部の
水無月琴子さんがドテラを着て炬燵にもぐりながら蹲っている。
「なんだ。君か。今日は部活休みよ?」
「ちょっと忘れ物を取りにね。水無月さんこそ、何してるの?」
「あんまり寒いんで、こうやって暖をとっているのよ。」
そういえば、この人は無類の寒がりだった。冬になると、
誰憚る事なく、制服の上にドテラを羽織って校内を闊歩している。
「ふーん。でも、いいの?部活もないのに勝手にここで
こんな事してて。」
「いいのよ。ついさっきまで校長もここで暖まっていたんだから。」
「なるほど」
「ほら、ボケッと立ってないで、あなたも暖まったら?」
「あ。それじゃ遠慮なく。」
彼女は相当にきつい性格で、その上、茶道部部員にしては落ち着きに
欠けるところのある俺に対しては、殊に日頃から口やかましく色々と
注意してくるので、少々(いや、かなり)俺としては苦手としている
女の子なのである。あるが、それでもスタイル抜群の美人である事は、
誰もが認めているところなので、そんな美女と炬燵に差向いで
二人きりというのは、悪いシチュエーションではない。

しばらく、他愛もない事を喋りながら暖まっていると、彼女が
ボソッと言った。
「寒いわね」
「えっ?そ、そう?」
「寒いわよ!」
「あぁ…。そ、そうだね。」
俺としては、炬燵だけで充分暖かかったのだが、何しろ相手は無類の
寒がりで、あの性格の水無月さんである。逆らうのは得策ではない。
「そうだ。いい物があったんだわ。」
そう言うと、水無月さんは奥の納戸の方に行って、暫くゴソゴソと
何か探していたが、やがて「越後杜氏」と墨痕も鮮やかなラベルの
日本酒の一升瓶を2本抱えて戻ってきた。
「これよ、これ。あなたも飲むでしょ?」
「い…いや、いくらなんでも学校でこれはまずくない?大体なんで
部室にこんなもの。」
「男が細かい事気にしないの! どうせ誰もこないんだから。」
「そ、そうだね。じゃあ、いただきます。」
くどいようだが、逆らうのは得策ではない。
俺の返事も待たず、既に水無月さんは2客の湯呑みにどぼどぼと
注いでいる。
俺もそこそこ飲める方だが、水無月さんも、相当いける口だった。
それでも、二人で一本以上も空けると、口調はしっかりしている
ものの、彼女の頬がほんのり桜色に染まってきて、うっとりするほど
色っぽい。
「ふうっ。やっと暖まってきたわね。」
「そ…そうだね。」
結構大き目な炬燵で、足が触れ合わないのが幸いだった。
でないと、理性を保つ自信が無くなってきた。
結局、二人で二本を空(から)にして、部室を後にした。

やはりアルコールの作用なのか、水無月さんは普段よりずっと陽気で、
楽しく話しながら二人で帰路を歩いた。
もう、俺の家までかなり近いところまで歩いて、はたと気付いた。
「あ、あれ?水無月さんの家って、ひびきの高校のすぐ近くだった
んじゃなかった?とっくに過ぎちゃったよ?」
「えっ?あらホントねぇ。どうしようかしら。また冷えてきたし。」
「も、もう?ほんと強いんだねー。酒。」
「歩き疲れちゃったし。いいわ。あなたの家に泊めてくれない?」
「え、えぇぇぇぇっ!?そ、それは、さすがにまずいでしょうっ!
だ、だって、家の人には?」
やはり酔っているんだろうか?正常な状態の彼女ならこんな事は。
「父は出張。母は同窓会旅行。兄はツアーの追っかけ中。なんの
問題も無いわ。何?いやなの?」
「えっ?いや。いやじゃない。ぜんっぜん、いやじゃない。いやー、
是非、泊まって欲しいなぁ。あは、あはははは。は。」
何度も言うようだが、逆らうのは得策ではない。
「いいわよね。だって、あなた一人暮らしなんだし。」
言ったとたん、「あっ」と小さく叫んで彼女は両手で口を塞いだ。
「ご、ごめんなさい。今、何も考えずに無意識に言ってしまったわ。
本当にごめんなさい。無神経だったわ。」
そうなのだ。俺は父親の転勤でこの生れ育ったひびきの市を離れ…
その、転勤先で両親を事故で失った。そこにとどまるのがいやで…
莫大な賠償金の一部で思い出の、このひびきの市に家を購入して、
7年振りに戻って来ていたのだ。多分水無月さんは、俺の幼馴染みで
彼女の親友でもある陽ノ元光からその辺の事情は聞いていたのだろう。
だが、俺は水無月さんの言葉に傷付くどころか、逆に直ぐに自らの
非を認め、素直に謝っている水無月さんの姿勢に感動していた。
恐らく彼女はきついというより、とても率直な人なんだろう。で、
…多分、本質的にはやさしい人なんだと思った。
「ああ。全然気にして無いから。水無月さんも気にしないで。ね?」
「あ、ありがとう。本当にごめんなさい。」
「本当にいいから。さ、ついたよ。」
水無月さんは一階和室にある仏壇の俺の両親の遺影に手を合わせると、
もうすっかり普段の調子に戻っていた。
シャワー借りるわよ覗いたりしたら殺すわよジャージかトレーナの
上下ないの?洗ったものじゃないといやよタオル貸して一枚じゃ
足りないわよもっと大きいのないの?
などと言いたい放題言って浴室へ消えて行った。
残念ながら、覗いたり、ましてや強引に一緒に入る等という度胸が
俺にある筈も無かった…。一瞬でも彼女をやさしい等と思った
俺が馬鹿だったかも知れない……。
暫くリビングでテレビを見ていたら、浴室の扉が開く音と、
とんとんと2階に上がって行く音が聞こえた。
俺もシャワーを浴びる事にする。いつもの浴室だが、水無月さんの
入った後だと思うと、何かドキドキした。心なしかいい匂いが
するような気もする。

2階の俺の部屋(勉強部屋兼寝室)に上がると、既に水無月さんは
安らかな寝息をたてている。俺のベッドで。
酔いがまわったせいなのかとも思ったが、そういえば元々この人は
やたら寝るのが早いと光から聞いた事があったのを思い出した。
時刻は午後9時をまわっている。
さてどうしたものか。まだ全然眠くはないのだが。今は暖房が
効いているが、消したらさすがに寝具無しでは寒いだろう。
寝具は今水無月さんが占領しているひと組しか無いのだ。
こんな事なら客用の寝具も買っておくべきだったと思ったが、
今さらどうしようもない。
とはいえ、水無月さんとひとつベッドに同衾したりしたら…
理性を保つ自信が無いし、もし、水無月さんが目を覚ましたりしたら
どんな修羅場になるやら……。
あれこれ思い悩みながら、俺は水無月さんの寝顔をじっと見つめる。
射すくめるような瞳が閉じられているせいで、彼女の寝顔は、
17歳という年齢相応にとても可愛らしい。
改めて綺麗だと思う。これだけ近くからまじまじと見つめても、
欠点らしい欠点というものは全く見つけられない。
これで性格さえなければ、男子どもがほっておかないだろうに。
見つめているうちに、心臓の鼓動が高鳴ってきて、顔が赤らみ、
股間が硬く充実してくる。なんといっても俺は身体健全な17歳の
若い漢(おとこ)なのだ。まずい。たとえ同衾しなくとも、果して
一晩理性を保つ事なんて出来るのか?
などと考えていたら、ふと、水無月さんがいつのまにか目を開けて
じっと俺を見つめている事に気付いた。
「!」
鼓動が更に跳ね上がる。
「今、いやらしい事、考えていたでしょう?」
見透かされている。
「い、いやあの。」
動揺して、俺は訳の判らないことを喋り出す。
「いや〜。こういう場合手を出すのと出さないのと、どっちが
女の子に対して失礼なんかな〜?なんてな事を……はは。は。」
(ぐわぁ!俺の馬鹿馬鹿馬鹿。フォローになってねぇっていうか、
いやらしい事そのものじゃねえか!それって。)
水無月さんはニコリともせずに俺をまじまじと見ている。
きっ…気まずい……。
そのまま、彼女はぐるんと寝返りをうって俺に背を向ける。
(み…みろっ!怒らせたぞっ!)
彼女の身体の回転に合わせ、阿呆のように俺は立ち上がる。
充実していた股間がみるみる萎えていく。
呟くように水無月さんが言う。
「そうねぇ。紳士的に振舞ってくれたら、それはやっぱり
嬉しいわね。」
「へっ?ああ。そ…そうだね。そりゃ、そうだよね。」
声にがっかりした響きがこもらないよう、努力したつもりだったが、
多分、失敗しているだろう。
「でも、そうなったらなったでもいいかな?って思わなければ、
いくらなんでも、泊まったりまではしないわよ。」
「えっ?」
咄嗟に彼女の言った事が理解出来なかった。
水無月さんは掛け布団を撥ね除け、起き上がるとベッドの端に
座り直して、正面から俺を見上げる形になった。
いつもとは違う…そう、挑発するような目だ。アルコールの
せいなのかどうかは俺には判断がつかなかった。
「……したいの?」
「えっ?」
漸く彼女の言葉の意味を理解し、俺はかぁっと赤面した。同時に
意志とは無関係に再び股間が充実してくる。
水無月さんは甘く鼻を鳴らす。
「ふふん。持ち主同様、ここも馬鹿正直ねぇ。」
赴廬に彼女はおれのバジャマのズボンに手をかけ、ブリーフごと
膝の辺りまで引き降ろした。
俺の陽物は一旦服と共に下に引き降ろされ、凄まじい反発力で
上に跳ね上がり、下腹を叩く。音がしたのではないかと思った
ほどの勢いだ。
「凄いわ。」
水無月さんは軽く俺の根元近くを右手で握った。それだけで
俺は更に硬度を増し、痛いほどになった。
彼女は顔を近づけて軽く舌を伸ばし、俺の鈴口をチロッと舐める。
「くうっ」
反射的に情けない声が漏れる。
満足げな笑みを浮かべると、彼女は俺をくわえこんだ。
頭を軽く前後に振りながら、絶妙な強弱でもって、唇で俺の
雁部分を刺激する。その間も舌を休めず俺を攻撃する。
鈴口や亀頭の裏のネクタイ部を重点的に攻めたと思うと、
亀頭全体を、舌を螺旋状に回転させ、攻め立てたりする。
何という柔らかい感触。自慰では到底得られない。彼女の
右手は俺の根元を軽くしごき続け、左手は袋を触るか触らないか
のタッチで、さわさわと刺激している。
彼女のうっとりと目を閉じた表情が凄まじくエロチックだ。
視覚と触覚で同時に刺激を受けては堪らない。
(う・・・上手いっ!)
思わず彼女の髪の毛を両手でくしゃくしゃっとする。
想像以上に柔らかい髪の毛で、その感触が更に快感に
フィードバックしていく。
ふっと、彼女はきっと初めてではないのだろうな。という考えが、
過ったが、(言っておくが、俺は童貞だ。)今は考えずに快感に
浸ることにした。
10分以上攻め立てられ、俺は限界が近づいていた。膝に力が
入らない。
「み…水無月さん…。俺…もう出ちゃうよ…。」
ふっと、水無月さんが顔を上げた。俺の亀頭から彼女の口に
かけて、唾液が一本糸をひいている。紗のかかったような目。
「琴子、でいいわよ。君。いいのよ口に出して。全部飲んで
あげる。」
初めて琴子さんが俺の下の名前を呼んでくれた。いや、それ以上に
あの、気位の高い彼女がそこまで俺に奉仕してくれるという事に、
言い様のない感動を覚えた。
今度は琴子さんはさらに頭の震幅を大きくして、根元まで深く俺を
飲み込んでくれた。既に臨界点を迎えていた俺にとどめをさす様な
激しい動きだ。肛門に力を込め、耐えに耐えたが、もう駄目だ。
「い…イクよっ!琴子さんっ!」
頭の奥がツーンと痺れ、立ち眩みをおこしそうになる快感が全身を
駆け巡った。自分でもびっくりする程大量の精を琴子さんの口内に
解き放った。琴子さんは絞り尽くす様に更に右手で俺をしごきたてる。
こくんこくんと飲み下す音と共に、琴子さんの白い喉が蠕動している。
その、なんとも刺激的な動きを見つめていると後から後から興奮が
沸き上がって来て、最後の一滴まで絞り尽くされたと言うのに
俺は全く萎える様子が無かった。
「はぁっ。はぁっ。はぁっ。」
「はぁっ。はぁっ。凄い。まだこんなに元気なのね。」
「だ……だって…。相手が琴子さんなんだもの…はぁっ。」
「本当に?」
「はぁっ…もちろん……」
琴子さんは愛おしそうに俺の頭を両手で抱え込んだ。必然的に俺は
前かがみになり、彼女にのしかかるようになった。
「……来て……。君……。」
「こ…琴子さん。」

そのまま俺は押し倒すように覆い被さった。
「やさしくして…。私、初めてなんだから…。」
「えっ!?」
「な…なによ!疑ってるの?あなた、私をそういう…」
「ち、違うよ。その…さっき、凄く上手だったから。」
「あっ…。ああ、そ…それは…」
珍しく、琴子さんは恥ずかしそうに目を逸らす。
「父や兄が隠し持ってるビデオ、こっそり見たりしていたから…
あ…あなただって、それくらい見るんでしょう?……」
か…可愛い。思わず少し虐めたくなって来た。
「ねぇ。それって、もしかして俺のために?」
「ばっ」
真っ赤になる。ますます可愛い。堪らず、唇を寄せる。
もしかして「唇は駄目よ」とか言われやしないか等と馬鹿な事を
一瞬考えたが、彼女は目を閉じてすんなり受入れてくれた。
思えば、彼女とキスするのは初めてだった。(いや、キス自体が
初めてなのだが)キスよりも口内射精が先というのも凄い順序だ。
くわえられた時も感じたが、とにかく琴子さんの唇は柔らかい。
独立した生き物の様に、ぬめぬめと俺の唇に纏わりついてくる。
暫く貪り合った後、おずおずと舌を差し入れてみる。嫌がる
様子はないので、少し大胆になって歯茎などを舐め回す。
「んっ…」
琴子さんの鼻から切なげな吐息が漏れる。それに勇気を得て、
彼女のわずかに開いた歯のすき間から舌を抉じ入れようとすると、
自ら舌を伸ばして迎えてくれた。最初はつんつんと舌先だけ
触れ合う感じで、やがて舌全体を激しく絡め合う…。
キスという行為がこれほど官能的で、興奮するものだとは、
思いも寄らなかった。ビデオ等だと、この辺はすっ飛ばして
見ているのだが…。認識を改めなければならない。
すでに俺自身は再び痛いほど屹立して、臨戦体勢になっている。
前戯を省略して、すぐに挿入したがる男の気持ちがよく判る
ような気がする。俺も一度琴子さんの口で果てていなかったら
どうなったか判らない。お陰で少しだが余裕はあった。
初めてだが、何とかビデオや活字で仕入れた知識を総動員して、
琴子さんを感じさせてみたいと思った。俺を飲み尽くしてくれた
彼女にお返しをしたい。
俺は唇を離し、彼女の首筋に唇を這わせた。
(こ…ここも柔らかい。吸い付いてくるようだ。)
這わせている俺の唇の方も気持ち良い。多分彼女の方も気持ち
良いんだろうなというのが、何となく判る。そんな感触だ。
そのまま唇を上の方まで這わせて行き、耳たぶを軽く噛む。
琴子さんの呼吸が少し速くなってくる。
「ね…ねぇ。お願い。部屋を暗くして?」
「んっ?あ、ああ。そうだね。」
立ち上がろうとして、俺は自分が膝の下にパジャマとブリーフを
纏わりつかせたままの間抜けな恰好であることに気付いた。
足をもぞもぞと動かし、脱いだものをベッドの下に蹴り落とす。
考えてみたら、これとて間抜けな姿には違いないのだが、
少なくとも動きにくい事はない。照明を2段階落としてベッドに
戻る間にパジャマの上も脱ぎ捨てて、俺は全裸になった。
琴子さんは目を閉じている。トレーナーの胸がリズミカルに
上下している。制服の時よりその豊かな膨らみがはっきりと判る。
ベッドの脇に腰掛け、無意識の内に右手を彼女の左胸に伸ばした。
反射的に琴子さんは左手を動かして拒絶する様な素振りを見せたが、
すぐに動きを止め、されるにまかせてくれた。
大きい。片手には余ってしまう。手全体で軽く揉んでみる。ぐにゃっ
と潰れるのかと思ったが、芯の方は意外と固くしっかりとしていた。
琴子さんが未開発なためなのか、元々そういうものなのか、
俺には分からない。なにしろ女性の胸に触るのは生まれて初めて
なのだ。
色々試みる。左手も右の胸に伸ばし、手全体で両胸を軽く摩る。
乳首に向かって柔らかく揉み上げてみる。掴んだまま、左右に
揺すってみたりもする。トレーナの上からでも、彼女の両乳首が
目立って来た。ブラジャーはしていない様だ。寝る時は付けない
習慣なのか、こうなる事を予期してなのか俺に分かる筈も無い。
自分で脱がせてみたかったな、とも思ったが些細な事だ。
右手は手の平で左の乳首を転がす様に回転させる。左手は中指と
親指で右乳首を揉む。時々中指と親指を放して軽く人差し指で叩く。
段々両乳首の抵抗が増してきた。勃ってきているみたいだ。
「んっ…あふっ……」
琴子さんの呼吸に軽く喘ぎ声が混じり始める。苦しげに眉間に皺を
寄せ、唇を半開きにしている。なんと男を奮い立たせる声と表情で
ある事か。
我慢出来ず、トレーナの裾に手を掛ける。琴子さんは、一瞬呼吸を
止めて躊躇したようだが、自ら背中を浮かせて協力してくれた。
彼女の協力のお陰ですんなりと脱がせる事が出来た。豊かな髪が
ふわっと舞う。軽く上体を起こして髪を整えると、また琴子さんは
とすっと横になった。もうすっかり俺に気を許してくれているのか、
胸を隠そうともしない。

中編に続く